No.DoB014 イーサリアル・ヴォイス
■カードナンバー
No.DoB014
■カード名
イーサリアル・ヴォイス
■カード能力
種類:パーマネントカード
勢力:緑/ファクター:3/コスト:1
精神:ー1/攻撃:+1/耐久:+1
スキル:パーマネント+1・サーチ(“胡桃 えいむ”)
アビリティ:
このカードがカード名称に「エルフ」を含むキャラクターにセットされている場合、≪このキャラクター≫はアビリティ「≪このキャラクターのアタック宣言に対してガード宣言している支配キャラクターのオーナー≫のデッキからカードをX枚捨て札する。Xはこのキャラクターを構成するブレイクカードの枚数に等しい。」を持つ。
≪このカード・“胡桃 えいむ”のネームを持つカード≫は、ファストカードのタイミングでセット宣言可能。
このカードは、ターン終了時に捨て札される。“胡桃 えいむ”にセットされている場合、ターン終了時にオーナーの手札に戻る。
■フレーバーテキスト
えいむの声が ママのとこまで届きますようにっ♡
■バックストーリー
“胡桃 えいむ”は、静かな部屋の中で鏡を見つめていた。
金髪がさらりと肩にかかり、碧眼がまるで深い湖のように揺れている。
尖った耳が髪の隙間から覗き、彼女が人間ではないことを物語っていた。
見た目は高校生ほどの少女。しかし、彼女の時間は人間のそれとは異なる。
数日前、えいむの母は床に伏した。父も何年も前に他界し、えいむはたった一人でこの家に残された。
えいむの母は病床でえいむの手を握り、弱々しい声で告げた。
「えいむ…あなたは…私たちの本当の子じゃない…の。あなたは…取り違えられた子…。でも、お父さんも…お母さんも…あなたを…心から愛してた…わ…。」
チェンジリング。妖精にすり替えられた子。
えいむの育ての母は、皺を幾重にも重ねた顔で最期の力をふり絞り、微笑みながら逝ってしまった。
えいむが物心ついて数十年、えいむの見た目は人でいう10代半ばの容姿から変わらない。時間が彼女だけを置き去りにしたようだった。
母の息が止まった後、えいむは静かに手を握り返し、涙をこぼしながら呟いた。
「ママ…ありがとう…。えいむ、知ってたよ…。えいむがママの本当の子どもじゃないってこと…。えいむは人間じゃなくてエルフだったこと…。今まで、一緒の時間を過ごしてくれて、ありがとう…。」
育ての親が自分を心から愛してくれていたこと、長い年月を共に過ごしてくれたことが、初めて実感として心に染みた。
程なくして、深い孤独がえいむを包んだ。
数週間が経ち一人にも慣れ始めた頃、えいむは地方都市のイベントニュースを映した街頭のサイネージを目にする。
それは、かつてえいむも参加したことがある大規模コスプレイベント。養母と一緒に作ったとあるアイドルアニメの衣装を身にまとい、金髪と碧眼、尖った耳を「コスプレ」と誤魔化す。普段は隠していた自分をさらけ出す感覚に胸が踊ったのを思い出した。
えいむは衝動に駆られ、当時の衣装を手早く用意し、何かに導かれるかのように駅へ向かった。
えいむは衝動に駆られ、当時の衣装を手早く用意し、何かに導かれるかのように駅へ向かった。
会場は人で溢れ、笑い声やカメラのシャッター音が響く。世界各国から、この地、この時、この出会いを求めて集う。
そんな中、近くにいたえいむと同じアニメ作品のコスプレをした女の子が目を輝かせて近づいてきた。
「すっごくリアルですね!本物のエルフ耳みたい!」
満面の笑顔でえいむに話しかけ、スマートフォンを片手に写真を求めてくる。
えいむは尖った耳を軽く手で隠しながら、ちょっともどかしい表情で笑った。
「…うん、ママと一緒に作ったんだよ。」
一緒に写真を取り、画像を共有したその時、頭上に大きな水場のある会場からは、大音量のファンファーレと共にゲリライベントが始まった。
会場のコスプレイヤー達に、そのキャラクターにまつわる作品の曲を歌ってもらうアニソンカラオケコーナーだ。
マイクを手に持つ男性が、白煙と共にステージに現れた。銀髪を短く整えた、大学生くらいの男性だ。彼は軽快なトークで場を盛り上げながら会場をを見渡し、鋭く目を光らせていた。
「イベントにご来場の皆さん!私は、M.C.キリハラ!今日は特別に、君たちを別次元の世界へ連れて行くよ!」
と笑みを浮かべ、視線をえいむに固定した。
「そこの貴女!そのコスプレ、とても魅力的だ!ステージに上がってきなよ!」
と半ば強引にえいむの手を取り、階段を降りた先の小さな壇上へ連れ出す。
慌てて「えっ?!やだ!恥ずかしいよ…!」とえいむは言うが、M.C.キリハラの「君ならできるさ!」という声と観客の拍手に押され、仕方なくマイクを受け取った。
壇上に上がると、キリハラは尋ねた。
「君の名は?」
えいむは顔を赤らめ、照れくさそうに答えた。
「え、えいむ…です。」
キリハラは目を細めて微笑み、マイクを手に叫んだ。
「オッケー!それじゃ、“胡桃 えいむ” さん!一曲いってみようか!」
キリハラが指を鳴らす。その瞬間、小さな壇上が一瞬にして広大なライブ会場に変わり、色とりどりの照明が瞬く観客席が広がった。
えいむは戸惑い、目を丸くした。
「なっ…何!?」
観客の声援が響き渡る。
「「「え・い・む! え・い・む!」」」
えいむは、華やかな舞台で歌い踊るアイドルに憧れがあった。しかし、人と違う金髪碧眼や尖った耳を持つことから、その気持ちをいつも内に秘めていた。自分の育った背景も影響し、表立った活動が起こせず、コスプレという形で自分を慰めてきた。
今、観客は自分に期待している。えいむもそれに応えたいという思いが溢れ、えいむは決意した。
「えいむ…歌うよ…!ママと一緒に作ったこの衣装があるから、大丈夫!」
自身が扮するキャラクターのテーマソングのイントロが流れ始める。
えいむは、空を見上げて呟いた。
「えいむの声が、ママのところまで届きますようにっ」
緊張で震えていた声が、次第に力強さを増す。観客は息を呑み、歌とダンスに没頭するえいむに引き込まれる。
エルフの持つ能力なのだろうか。ハイトーンの澄んだ歌声、イーサリアル・ヴォイスは、会場の人々全てを魅了していった。それはまるで遠い宇宙や、別次元の世界にまで響き渡るようだった。
「すごい!」「天使だ!」
歓声が上がる。
嬉しさと興奮で、全力で歌い上げたえいむは、少し目眩にも似た疲れを感じた。
「…どうやら彼女の力は本物のようだ。」
ステージの傍らでキリハラは呟く。
ステージの傍らでキリハラは呟く。
「「「え・い・む! え・い・む!」」」
観客のコールは続く。
「 !! 」
それはボウガンの矢だった。矢は、えいむの目前を走り、舞台袖のキリハラの脇腹をかすめた。
キリハラは動揺し、よろめく。それと同時に、華やかな舞台が陽炎のようにえいむの目の前から消え去り、元の小さな舞台と、横たわった大勢の観客、そしてコスプレイヤー達の姿があった。
キリハラは冷たい視線を向け、静かに呟いた。
「皇帝陛下、邪魔者が現れたようです。」
キリハラが右手を高く振り下ろしたと思えば、そこに漆黒の空間が現れた。
「“胡桃 えいむ”、君の本当の母親は…」
そう言いかけたところで、再びボウガンの矢がキリハラ目掛けて放たれた。
察知したキリハラは、一瞬にして闇の中へ消えていった。
「…本当のママ?!…一体どういうこと?!…キリハラさん!貴方は何を知っているの?!」
えいむは混乱した。えいむはキリハラの真意や彼の消えた先に隠された世界を知る由もなかった。
動揺が隠せない中、あまりの衝撃的な出来事に震えるえいむの元に一人の青年が近づく。
ボウガンを小脇に抱えたその青年は、えいむとよく似た金髪碧眼を持ち、その瞳の奥には何か暖かいものを感じた。
青年は、えいむに語りかける。
「やあ、また会ったね。」
(イラスト製作:はとり/ストーリー:Kinta@m)
※イラスト・ストーリーはTCG“アクエリアンエイジ”の二次創作であり原作とは一切関係ありません。
※イラスト・ストーリーはTCG“アクエリアンエイジ”の二次創作であり原作とは一切関係ありません。
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