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アクエリアンエイジ対戦会 “オオガキバトル” 公式ブログ

美少女TCG『アクエリアンエイジ』(c)broccoli のユーザー主催対戦会の開催告知および大会レポートを掲載するブログです。 2024年3月よりイベント専用ブログへ方針を変更いたしました。

No.DoB007 斎木インダストリー日本支部長“中島 虎徹”


■カードナンバー
 No.DoB007

■カード名
 斎木インダストリー日本支部長“中島 虎徹”

■カード能力
 勢力:白/ファクター:4/コスト:4
 分類:ワータイガー♂・ウォリアー♂・ワーカー♂
 精神:6/攻撃:5/耐久:5
 スキル:パーマネントー1・シールド・インターセプト・サーチ(“中島 虎徹”)
 アビリティ:
 このカードを[ワーカー♂]をもつ“中島 虎徹”にセット宣言する場合、≪あなた≫はこのカードをファストカードのタイミングで必要ファクターを無視してセット宣言可能。その際、支払ったコストは手札に戻る。
 このカードの下に「サラリーマン“中島 虎徹”」がある場合、≪このキャラクター≫は精神ダメージを受けない。
 ≪[ワーカー]・[ワーカー♂]を持つあなたの支配キャラクター全て≫に、イニシアチブ・シンクロ・ペネトレイトを与える。
 ≪[ワーカー]・[ワーカー♂]を持つあなたの支配キャラクター≫が捨て札される場合、このカードをダメージ置き場に置くことで、そのキャラクター全てを場に残すことができる。

■フレーバーテキスト
 責任は私が負う。君たちは思い切りやりなさい!!

■バックストーリー
東京の夜は、高層ビルのガラスに反射するLEDの光で満月を薄めていた。
 
“中島 虎徹”
 
堂々とした大柄な体躯に、穏やかな笑顔がトレードマークのサラリーマンだ。プロジェクトの成功を祝う打ち上げを終え、ほろ酔いでオフィス街を歩く。スーツのポケットに手を突っ込み、夜風に髪を揺らしながら、空を見上げる。
 
「満月か…」
 
いつもより心臓が速く脈打つ。子どもの頃から、満月の夜には説明できない高揚感が胸をざわつかせる。血が騒ぐ、とでも言うべきか。妻にはストレスじゃない?と笑われたが、虎徹自身、理由を知らない。ただ、毎回その感覚を押し込めてきた。
家では、妻と幼い娘が待っている。プロジェクトの成功で係長から課長への道が現実を帯びてきた今、人生は順風満帆のはずだ。
 
打ち上げでの部下の声が脳裏に蘇る。
「係長、今回も完璧でした! 昇進確定ですよ!」
部下たちが笑顔でグラスを掲げる中、若手の部下が目を輝かせて言った。
「係長のためなら、俺、徹夜でも頑張りますよ!」
 
虎徹は笑って肩を叩いた。
 
「お前もちゃんと寝ろよ」
 
だが、その言葉の裏には、部下を信頼し、どんな時も守るという揺るぎない心意気があった。彼には、人の心を掴む力がある。部下たちは、虎徹の指示一つで動くだけでなく、彼のために自ら進んで汗をかく。そんな信頼の輪が、虎徹のチームを強くしていた。
 
それでも、打ち上げの喧騒の中でふと襲ってくる虚無感。このまま課長、部長と進み、家族を養い…それでいいのか?  
 
 
路地を曲がった瞬間、気配を感じた。振り返ると、そこに立つのはスーツに身を包んだ女がいた。上品で洗練された立ち姿に、ダークブルーのテーラードスーツが完璧にフィットしている。襟元で整えられた髪は、月光の下で金色にきらめく。彼女の目は、穏やかな微笑みとは裏腹に、鋭く虎徹を捉えている。
 
「中島虎徹さんでいらっしゃいますか」
 
その声は低く、しかし滑らかで、どこか引き込むような響きがある。
 
「……どちら様ですか」
  
女はゆっくりと名刺を取り出し、細い指で差し出す。
 
「我が社で、今よりもっと壮大なプロジェクトに参加してみませんか」
 
名刺には、シンプルだが重厚なフォントでこう書かれていた。
 
『ITSUKIホールディングス CEO    斎木 麗名』
   
虎徹の目がわずかに揺れる。ITSUKIホールディングス。世界中で高層ビルや発電所などを建設し、インフラをも支える超一流企業だ。そんな企業が、なぜ自分に?
 
「我々は今、貴方のような力を持っている人を探していたのです」
 
と、麗名は続ける。彼女は一瞬、首を傾げ、虎徹の顔をじっと見つめる。
 
「そう、太古の昔から受け継がれし力を持った人を」
 
彼女の指が、名刺の端を軽く撫でる。まるで、虎徹の内に眠る何かを感じ取るような仕草だ。  
 
 
「力…? 何の話だ。俺はただのサラリーマンだ」
 
虎徹の声には、警戒と苛立ちが混じる。だが、満月の光の下、胸のざわめきが強くなる。まるで、麗名の言葉に呼応するように。
麗名は薄く微笑む。
 
「ただの?… 中島さん、あなたはご自分を過小評価しすぎです。プロジェクトを成功に導き、部下に慕われる…あなたの力は、すでに証明されています。部下たちがあなたのために動く、その信頼の絆は、並大抵のものではありません」
   
彼女の言葉に、虎徹は一瞬言葉を失う。打ち上げでの部下の笑顔、同僚たちの信頼。確かに、彼らのために戦ってきた。そこに麗名は続ける。
 
「それ以上の可能性が、あなたの中にある。感じたことはありませんか? 満月の夜に、血が騒ぐ瞬間を」  
 
虎徹の喉が一瞬詰まる。彼女はどうやって…? 誰も知らない、妻にも話していないあの感覚を、なぜこの女が?
 
「我々のプロジェクト――『Operation Nexus Initiative』――は、世界の未来を繋ぐもの。ですが、そこには太古の脅威と対峙する使命があります」
 
「脅威?」
 
虎徹の眉が寄る。
 
「古来より、人類を脅かす存在…人々はそれを『鬼』と呼んできました」
 
麗名の目が、月光を受けて一瞬、金色に光った気がした。
 
「中島さん、あなたの血は、その鬼を退ける力を持つ。あなたでなければ、できないのです」。  
 
虎徹の心臓がドクンと跳ねる。鬼? 荒唐無稽だ。だが、麗名の視線が、まるで彼の心の奥を見透かすようだ。満月の光が、全身を駆け巡り、抑えていた衝動が疼き始める。  
 
 
「ITUKIグループは、あなたを待っています。家族を…仲間を…大切なものを守るためにも、大きな舞台が必要ではありませんか」
 
彼女の言葉が、虎徹の胸に鋭く突き刺さる。家族。妻と娘の顔が脳裏をよぎる。麗名は名刺を指で軽く叩き、
 
「近いうちにまたお会いしましょう」
 
と残し、彼女のハイヒールが夜のアスファルトに軽い音を残して消えた。  
 
虎徹は名刺を握りしめたまま、立ち尽くす。満月の光が背を照らし、都会のビルの光が冷たく瞬く。本当に、俺にそんな力があるのか…? 頭を振るが、胸のざわめきは収まらない。麗名の言葉が、満月の下で絡みつくように心に残る。  
 
 
翌朝、会社に向かう電車の中、虎徹はいつも通りのルーチンをこなしつつ、どこか上の空だ。スマートフォンに妻から送られたビデオメッセージが届く。開くと、娘の小さな顔が画面に映り、弾けるような声で言う。
 
「パパ、今日は早く帰ってきてね! 一緒にあそぼ!」
 
 その純粋な笑顔に、胸が締め付けられる。  
 
昼休み、ふと内ポケットに忍ばせていた名刺を取り出し、じっと見つめる。『ITSUKIホールディングス CEO 斎木麗名』ネットで調べても、ITSUKIホールディングスの表向きの情報しか出てこない。多数の企業を傘下に治め、インフラ事業、グローバルな活動、完璧な企業イメージだ。
 
だが、麗名の言葉――「あなたの血は、鬼を退ける力」「家族を、仲間を守るため」――頭の中で反響する。  
 
デスクに戻る途中、窓から見えるビルの谷間を眺め、虎徹は思う。このまま、普通の生活でいいのか? 確かに今の仕事は安定している。部下たちの笑顔も信頼も、自分の誇りだ。だが、麗名の視線、満月のざわめきが、抑えていた好奇心を静かに掻き立てていた。 
  
 
その夜、帰宅した虎徹は、娘を寝かしつけながら、妻と何気ない会話を交わす。
 
「昇進したら、もっと家族の時間増えるかな」
 
アイランドキッチンの向こうで微笑む妻に、虎徹は曖昧に頷く。娘の寝顔を見ながら、胸の奥で何かが動く。あの日の言葉が蘇る。
 
リビングのテーブルに置かれた家族写真に、虎徹の視線が止まる。妻と娘と、笑う自分。薄くて重い名刺を無意識に握りしめ、目を閉じる。守るためには、変わらなければならないものがある――そんな予感が、静かに胸を締め付ける。
 
   
翌月のとある夜、ガラスと鋼でできた巨大なビルは満月の光を反射し、冷たく輝いている。虎徹はITSUKIホールディングスの本社ビルを訪れていた。麗名から届いた招待状を手に、ビルの入口を見つめる。
一歩踏み出せば、戻れないかもしれない。妻と娘の笑顔が脳裏をよぎる。これまで昼夜を共にしてきた部下たちの期待と信頼も。だが、胸の奥で脈打つ『血の騒ぎ』が、彼を前に進ませる。
虎徹は深呼吸し、ビルの自動ドアに向かって歩み出した。誰もいないエントランスのドアは音をたてずに開き、彼を飲み込んでいった。  
 
東京のどこか、ITSUKIホールディングスのオフィスビル最上階。モニターに映るのは、ビルに入る男の背中。麗名の声が響く。
 
「彼は、鍵だ。だが…他の者たちも動き始めている」
 
別の路地では、赤い目の影が一瞬、月光に浮かぶ。鬼と呼ばれる存在か、それとも別の勢力か。物語は、まだ始まったばかりだ。
  

(イラスト生成:Kinta@m/ストーリー:Kinta@m)
※イラスト・ストーリーはTCG“アクエリアンエイジ”の二次創作であり原作とは一切関係ありません。

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